はり、ハリ、針、鍼どのように書いても「痛さのイメージ」が付いてきます。
一般の人達に調査すると3人に2人は、鍼は「痛い」、「怖い」と思っています。
幼いときに予防注射で泣いた記憶が蘇るのです。
中国の古代社会では、あらゆる身体の不具合に「鍼」で対応しようとしていました。
そこから9種類の鍼があるとされています。古代中国では「9」は、あらゆるもの全てを意味していました。
9種類の鍼があれば、あらゆる状況に対応できると考えられたのです。
9種類の鍼は大きく3種類に分けられます。
一つは、身体を切り開くものです。これはメスに発展してゆきました。
一つは、「刺す」鍼です。
最後の一つは、刺さずに身体の表面から刺激を与える鍼です。
このように鍼はもともと「刺す」ものばかりではないのです。
「触れる」、「押す」、「ひっかく」など様々に刺激を与えます。
現在も実際に刺さないはりは、「小児鍼」としても用いられていますが、もっと広く大人にも活用されて良いものなのです。
さて、鍼を刺さない鍼灸師ってありでしょうか。
日本では、種々の免許制度から欠格条項が外されました。
つまり医業であれば、医業の全てができなければ医師にはしない。というのが従来の考え方でしたが、医学が理解できれば、医業の全てはできないがある部分ができれば、医師にしても良いという考え方に変わったのです。
そこで、目の見えない人、耳の聞こえない人達も、医学部に入学できるし、医師国家試験も受験できるのです。
鍼を理解することができる。
それは身体の仕組みを学ぶと言うことです。
鍼は用いる道具の一つにしか過ぎません。
「刺す鍼」を道具として使わなくても鍼療法はできるのです。
科学的な新しい道具として「低出力レーザー治療器」、「低出力超音波治療器」など、20世紀に登場した新しい道具です。
古いものを尊重し新しいものを付加し常に新たな展開があります。
「刺さないはり」イメージが随分違うと思います。
「怖い」、「痛い」はなくなり、親近感が大きくなります。
私達は、古代東アジアの文化遺産ともいえる、そして身体についての特に「身体の治す力」に対処するすばらしい経験医術に親しみを持ち広く貢献できるようにしたいのです。
21世紀の先進諸国の人々は、「身体の治す力」への対策が求められています。
鍼を刺す技術が低くても好いということとは全く別のことです。