私は、見学に見える人達に鍼灸や柔道整復の臨床を見学して「何を見るのですか」と質問することがよくあります。

私は、次の五つの点について見なければいけないといいます。

 (1) 右手は、
 (2) 左手は、
 (3) 目は何を見ている、
 (4) 姿勢は、
 (5) 何をしようとしているのか、

特に、(5)の何をしようとしているのかが一番大切なことです。
鍼を刺しているというのは見れば分かります。
しかし、鍼を刺して何をしようとしているのかを見なければならないのです。
それは、頭の中を見ることです。
聴くことです。

先生は今、何を考えているのですかとか、何をしようとしているのですかとか問うても多くは応えてもらえないでしょう。
失礼なと思われるのがせいぜいです。
先生の頭の中を読むのです。
そして、先生はこういう風に考えておられますかと問うのです。

視覚に障害があったりすると自分が見えないという障害を大きく感じてしまうことがあります。
しかし、世の中の多くのものは、私達は直接自分の目で見ているものより、誰かの目で見たもの、あるいは目では見えないものがなんと多いかということです。

教育でも初歩の段階は、「百聞は一見にしかず」といわれるように、自分の目で見ることがかなりの比重を持ちますが、高等教育の段階では目では見えない部分が大きくなってくるのです。

名人の心は、目だけでは見えないところにあります。
目だけでは見えないところをいかによく見るか。
21世紀社会は、あらゆるところでその能力が問われる時代です。

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