「遺伝子医療革命」という書籍がNHK出版から出ました。
著者はフランシス・S・コリンズというゲノム研究の第一線の研究者です。
序章 もう、知らないではすまされない。
1章 未来はとっくにはじまっている。
2章 遺伝子のエラーがあなたに出るとき。
3章 あなたの秘密を知るときがきた。
4章 癌はパーソナルな病気である。
5章 人種と遺伝子。
6章 感染症と遺伝子。
7章 脳と遺伝子
8章 老化と遺伝子
9章 あなたの遺伝子にふさわしい薬をふさわしい量で。
10章 一人ひとりが主薬の未来へ。
ヒトゲノム研究の第一線で活躍してきた著者が、物語風に上記の内容で書いています。
まさに、序章のタイトルのように「もう、知らないではすまされない」時です。
3章の1節です。
「発見の洪水」
その後「よくある病気」の遺伝子リスク因子の報告はぽつりぽつりと出てきてはいたものの、転機を迎えたのは2007年だ。この年には堰を切ったようにどっと報告が出てきて、本書執筆中もその洪水は続いている。糖尿病や心臓病、癌、ぜんそく、脳卒中、肥満、高血圧、そして心房細動や胆石まで、関連する遺伝子リスク因子が目もくらむような勢いで見つかってきて、生物医学分野の一流紙の誌面を埋めている。毎月毎月、新しい関連性、驚くような関連性が発表され、すぐにほかの研究者グループによって再現性が確認された。ほとんど全ての遺伝子が「よくある病気」に関連していたのは、驚きだった。
また別の驚きもあった。病気のリスクに関係する遺伝子のバリアントのほとんどにとって、問題は、その欠陥が蛋白質をゆがめるということではなく、その遺伝子が正しいタイミングで正しい量だけ「オン」になるか「オフ」になるかだということがわかったのだ。と記述している。
これはとても重要なことを意味している。多くの病気に遺伝子が関わっているけれども、決定的な遺伝子構造そのものではなく、「オン」、「オフ」という機能的な部分での関わりであるということである。
このことは生体の内部環境に影響を与える環境因子の関わりが大きいことを示している。生活習慣への対策こそが基本であることである。今日の研究が多く分子生物領域に傾いているが、遺伝子リスク因子が関わるという病気も対症療法ではなく、身体の仕組みのメンテナンスこそが求められているということである。
遺伝子医療革命において鍼灸など身体の調子を整える療法こそが求められるものであることが明確にされる。