今年最後のメッセージです。
お付き合いいただいた皆様ありがとうございます。
何を書こうかいろいろ考えました。
やはり「夢」を書きたいと思いました。

  私の著書

「臨床鍼灸学を拓く」(2003年)と「臨床鍼灸治療学」(2005年)は、私の鍼灸の専門家としてのメッセージです。
両署を今回、第2版として増補改訂します。
2版の「序文」をお伝えします。
数年間テキストとして用いた結果、必要なところを増補できました。

私が言葉を発せられなくなっても私の代講をしてもらえる基盤ができたかなという思いです。
正月5日はお休みにします。



「臨床鍼灸学を拓く」

改訂2版

                     2版への序

                                                筑波技術短期大学 名誉教授

                                                現 宝塚医療大学 保健医療学部

                                                                  鍼灸学科教授

                                                                    西條一止

 「臨床鍼灸学を拓く」初版から丁度10年が経過しました。
本書の真髄は「生体の自然の仕組みを活用する治療」です。
「人に優しい鍼治療」です。
そこから「自然鍼灸学」とも呼びます。
自然鍼灸学の大きな柱は、次の二つの柱です。

 1 宇宙、地球環境の時間のリズムです。特に呼吸のリズムが副交感神経における最も重要なリズムです。

 2 宇宙、地球環境の重力の場です。特に重力に対する生体の姿勢が交感神経における最も重要な要素です。

今回、次の3点を増補しなければならないという思いで2版の出版となりました。

第一点は、目次、2 「なぜそうなのか:臨床鍼灸学の意味」に、

 11 「治療を受ける体位と生体反応」を追加しました。
 治療を受ける姿勢による効果の違いの基本についてp43から49で述べました。

第二点は、臨床からの六つのメカニズムについての、M5とM6の同じ刺激を用いるのに治療を受ける姿勢によって効果がなぜ真反対になるのかの答えが初版では示せませんでした。

 今回p71に書きました。

第三点は、本書の治療は自律神経機能が基本にあります。
 自律神経機能遮断剤を用いた実験により瞬時心拍数における交感神経、副交感神経の意味を解明しています。

   「動的自律神経機能観察法:瞬時心拍数と自律神経機能」として19頁にわたり詳述しています。

本書における自律神経に関する資料は、瞬時心拍数が測定の簡便化により健康産業、スポーツ現場、医療臨床現場等で活用される際の基礎、臨床研究の貴重な資料となります。

なお、経穴の部位について世界標準が定められました。
本書は、改訂前の経穴部位を用いて実験研究した資料です。
したがって経穴名部位は従来のものです。
従来においても日本では経穴は部位を移動するものというのが大方の専門家の人々の見解でした。
臨床の場においては、触診情報を主に刺鍼部位(経穴部位)を決めています。

本書が多くの皆様に広くお役に立てることを祈念し世に送ります。

                                 20131


「臨床鍼灸治療学」 第2版の序

「守るだけでは伝わらない」

中村勘三郎さんの言葉です。
中村勘三郎さんがなさったように、伝統鍼灸を伝えるための一歩を踏み出したのが、「臨床鍼灸学を拓く」(2003年初版)と2005年に出版された「臨床鍼灸学」初版です。

本書の鍼治療の特徴は、何といっても「身体の自然の仕組みを用いる経験医術の真髄を生かした科学的鍼治療」です。
そして「伝えることができる鍼治療」です。

中村勘三郎さんは、「守るだけでは伝わらない」と言われていましたた。
背中を押していただいた思いです。

今回、大幅に増補し第2版の出版になりました。

「臨床鍼灸学を拓く」、「臨床鍼灸治療学」をテキストとして、新宿鍼灸柔整専門学校、日本伝統鍼灸大学院大学、盛岡医療福祉専門学校、平成医療専門学校教員養成科、東洋医療臨床技術大学校アカデミー、宝塚医療大学等で、「臨床鍼灸学」の講義を続けてきました。
その間における指導の成果と学びが今回の増補改訂になりました。

 1 江戸、明治そして今日への「鍼灸の技術革新と科学化」についての歴史経緯を書きました。今日の我が国の鍼灸教育の原点です。

  2 刺鍼の基礎技術について書きました。基礎技術がとても大切なことを痛感したからです。
   刺鍼の基礎技術がしっかりしていないと状況に応じた臨床技術に発展できません。しかも基本に忠実な基礎技術が大切です。

  3 鍼治療を組み立てる設計図を書きました。

「基本的治療」で各患者に必要な治療を書き出す枠を決めました。
そこで書き出された、患者に必要な治療を「実際の治療パターン」に位置つける仕組みも書きました。

臨床家が頭の中で行っていることを順を追って書き出すようにしました。

治療の順序に従って患者が治療を受ける姿勢とそのときに行う治療が並んでくる手順です。

 4 自然鍼灸学治療で特に重要な刺鍼について深層背筋(多裂筋、最長筋)刺鍼、腹部刺鍼、大腰筋刺鍼、中殿筋刺鍼、足底筋刺鍼、合谷刺鍼、頚部刺鍼、背部刺鍼、肩甲下筋刺鍼など具体的な刺鍼方法を書きました。

臨床鍼灸の臨床力を高めるためのきわめて実践的な書物になりました。

次の世代に伝えられる書です。
多くの人々にお読みいただき、臨床鍼灸実践力を培って国民の期待に応えられる鍼灸を提供していただけることを祈念します。

20131

           西條一止

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