同書は、酒井仙吉博士著です。
先生は東京大学農学系研究科博士課程を修了され東京大学名誉教授です。
専門分野は動物育種繁殖学です。
研究テーマは泌乳の開始と維持、停止機構を分子レベルで解明すること。

動物育種繁殖学という、家畜の改良という分野は、人工的に比較的短い時間で、遺伝、進化を観察出来る特殊な分野です。
素晴らしい知見が沢山です。
とても勉強になります。
以下は「はじめに」の一節である。

古代ギリシャ時代、アリストテレスは生命の誕生について自然発生説を唱え、ミツバチやホタルは草の露から生まれ、ウナギやタコ、イカなどは海底の泥から生まれるとした。
これを疑う人は、ルネッサンス期までいなかった。
科学的に否定したのがパスツールで、1861年のことである。
ところが38億年前に出現した生物は無機物から誕生し、自然発生説と同じようなことになっていた。
しばらくして多細胞生物となり、次に複雑な機能を身に付けていった。
その根底に生存競争があった。
勝者は何らかの点で相手を超える能力を有していたことを化石が教える。
それが子孫に受け継がれたのは、遺伝子に刻まれていたからであり、また新たに刻まれたからでもある。
したがって進化を遺伝学で述べることが可能であった。

本書で主眼にしたのは、なぜ動物が陸上を目指し、どのように適応し、どのように子孫を残す方法を変えたかである。
進化への旅は、基本ではあるが、進化を生み出した機構が遺伝の仕組みにあったというところから始めよう。

期待して読みましょう。

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