8月24日(月)NHKEテレの「きょうの健康」メディカルジャーナルで放送。
国立循環器病研究センター室長、野尻 崇医師がお話しされた。
肺がんでは、脳、肝臓、骨などに転移が起きやすい。
心臓ホルモン(心房性ナトリウム利尿ペプチド:ANP)は、血圧を下げる、利尿するなどの働きをしている。
肺がんの患者では手術後に約2割の患者で不整脈が起きる。
この不整脈の治療に心臓ホルモンを用いたところ、これらの患者で転移が少ないことに気づいた。
検討した結果、手術後2年間での転移を起こさない率は、手術だけの群では67%であったが、手術後に心臓ホルモンを用いた群では91%で大幅に改善していることが分かった。
転移が起きる条件は、血液中にがん細胞が散らばることと血管に炎症が起きることである。
心臓ホルモンが転移を防ぐメカニズムは、血管に炎症が起きると炎症物質が発生しEセレクチンという接着分子ができ、この接着分子にがん細胞が接着して転移が成立する。心臓ホルモンは接着分子を少なくすることで転移を防いでいると考えられる。
今年の9月から全国10施設で、肺がん患者の80%を占める非小細胞がん患者(ステージⅣ以外)、500名を対象に手術のみ、手術+心臓ホルモン使用の2群で比較研究を行う。5年間かけ手術後2年における転移の有無を比較する。
心臓ホルモンのがん転移予防効果は、肺がんだけではなく他のがんにも期待出来る可能性が高い。