タイトルは1月11日の朝日新聞朝刊、文化・文芸欄の記事である。
世紀の大発見は、科学論文としてもお手本、
科学者のあるべき姿を問いかける。
自然科学系のノーベル賞で日本人の受賞が相次ぐなど、日本の科学水準が賞賛される一方、原発事故やSTAP問題では、科学者や科学論文のあり方が問われつづけた。
「科学者の姿勢や論文を考えるたび、思い浮かぶのがアルバート・アインシュタインです」と話すのは、理学博士で元富士ゼロックス基礎研究所長の唐木田健一さんだ。
非合理を許さない鋭敏な感覚を、アインシュタインから学んだ。
特殊相対性理論の原論文を翻訳し、筑摩学芸文庫から出している。
岩波文庫版では、訳者の故・内山龍雄大阪大名誉教授がこう記す。
「初等数学の知識があれば理解できる。まことに珍しい貴重な論文」
1905年6月のこの論文は、ちくま版でも岩波版でも日本語訳は50頁足らずだ。
内山教授は「アインシュタインの論文はどれも大変に簡明で理解しやすいが、この論文は特にそうだ。
説得力あふれる論旨で、読者をゴールまで引きずる」と絶賛する。
アインシュタインは何が違ったのか、唐木田さんは「目の前の矛盾に敏感で、それを克服しようとする誠実な態度だ」という。
特殊相対性理論は、18世紀の体系化されたニュートン力学と、19世紀に発展した電磁気学の間にある矛盾にアインシュタインが必死に格闘した成果だ。
走っている車からも、止まった車からでも、発せられた光の速さは同じになる。
この「光速度不変」の原理をもとに、相対性理論が難問を克服した。
「だが残念ながら、日本の社会は矛盾に鈍感だ」と唐木田さんは嘆く。
原発はその象徴で、廃棄物処理などの矛盾は未解決のまま。
STAP細胞でも暗然とさせられた。
当初、「論文の体裁上の間違いはあったが、現象は存在する」などと弁明された。
まさに論文軽視です。
今こそアインシュタインに学ぶべきだと、唐木田さんはいう。
私は、ちくま版、岩波版を早速購入しました。