筑波技術大学の入学式での祝辞です。
わくわくした気持ちをお分けできればと思い公開します。
平成29年度、入学生諸君、入学おめでとうございます。
ご家族の皆様、大学教・職員の皆様、おめでとうございます。
さあ、皆さん、皆さんは、今、人生でおそらく最も充実した時を過ごすためのスタート台に立っているものと思います。
私も50数年前のわくわくする気持ちを明確に思い出します。
どんな友と会えるのか。どんな師と会えるのか。
心わくわくしているものと思います。
そして、「自分自身が他の人からわくわくした気持ちで待たれている人」であることを意識してください。
「互いの期待に応えるために心を組み立て治すチャンス」です。
「大変身するつもりで心機一転」して「つくば生活を始めましょう」。
皆さんは大学生活を楽しませてもらう、お客様ではありません。
入場料を払ったら通常はお客様です。
しかし、「学び」というドラマを演じる大学では違います。
学生が主役です。
学生自身の「学び活動」こそが主役です。
さて、学部入学の諸君、我が国においては、高等学校教育までは、文部科学省が教育の全てを決めています。
しかし、高等教育としての大学教育は違います。
「教えられる」という受け身ではなく、「学生が自ら学ぶ」学校が大学です。
「諸君は学生が自ら学ぶ大学」に入学されました。
大学では、1単位の講義は15時間です。
しかしそれには1時間の講義を受けるには図書館や自宅での2時間の予習、復習が課されています。
合計45時間で1単位なのです。
予習、復習をして初めて大学の勉強なのです。
特に予習が大切です。
大学には「シラバス」という授業計画書があります。
これを見て予習することで、より効果的な「学び活動」としての授業への参加が可能になります。
予習することは自分の頭で考えることです。
それにより創造性が高まり、問題解決能力が育まれます。
大学における「本物の勉強」をしましょう。
諸君は、福祉国家を目指す我が国のフロンティアです。
しっかり自覚を持ってください。
人からお世話をしていただく立場から、人にお世話の手をさしのべる立場に変わるのです。
諸君は、自らの意志によって大学を選び、入学試験を受け入学されました。
自分自身の人生と真正面から向き合い、人生の最も大切な基礎を学ぼうとするスタート台に立ちました。
自ら学ぼうとする時に、何が必要でしょうか。
何だと思いますか。
「計画」です。
「生活の設計図」です。
まず、1日の過ごし方(計画)、週の計画、月の計画、年の計画。
必ず、「計画」を書いてください。
あらゆることについて計画を作ることです。
計画を作るには「考え」が必要です。
何の考えもなくただ授業を受けるのは、たとえ皆勤しても大学での学習ではありません。
本学は、聴覚に障害を持ち、あるいは視覚に障害を持つ人達が学ぶという我が国で唯一の国立大学法人の大学です。
優秀な仲間が沢山います。
他では得られないチャンスです。
生涯の友を得られるチャンスです。
しかも大多数がキャンパス内にある学生宿舎にいます。
通学時間は数分です。
この大きな特色ある環境をプラスにするか
マイナスにするかは諸君達、一人ひとりの生活態度にかかります。
基本的な生活ルールを守りましょう。
ヒトは夜行性動物ではありません。
「活動と休息のリズム」を大切にしてください。
わたしたちの身体には生物としてのサーカディアンリズムという1日のリズムがあります。
睡眠はいつでも良いわけではないのです。
万全の体調でまず授業に参加することが大事な前提です。
自分の生活リズムを大切にし、友の生活リズムを邪魔しないことです。
大学生活は4年間を通じて成果をあげる長距離走です。
大学院に入学の諸君、さらに専門性を高めた研究主体の学びです。
興味が持てないことでは到底意味がありません。
どれだけ学問に、研究に興味を膨らませられるか。
朝に夕に考えを練り、明日が楽しみという気持ちを持てることです。
諸君、眠りは学習したことの脳内における整理をするという重要な時間です。
楽しくて、時間がもったいなくて眠ってなんかいられない。
という気持ちにもなろうかと思いますが、それは違います。
規則正しい上手な眠りは、学習能力を高め、健康な身体と心をつくり、人生を豊かにしてくれます。
勉強しようという時には「勉強しようという気構え」が必要です。
睡眠にも、「さあ眠りの時間だ」という気構えが必要です。
それだけ大切な時間なのです。
反省は眠りの時間の中ではしません。
学習の時間の中でします。
眠りの時間の最初にすることは、感謝の言葉をつぶやくことです。
感謝の気持ちになり眠りに入りましょう。
感謝の気持ちになると心が平穏になり熟睡出来る脳の状態になります。
最後に、楽しい時間が私たちの心身の機能を高めてくれます。
大学生活は、楽しくなければなりません。
その楽しい時間が貴方達を最も良く成長させてくれます。
私たちはその様な「地球の自然界における生き物」なのです。
本学は障害のある皆さんに特化した素晴らしい教育環境です。
しかし、つくばには他にも、すばらしい教育、研究環境が沢山あります。
つくば駅の真上の交差点の北東の角に交番があります。
その隣の中央公園に「未来への道」というモニュメントがあります。
そこにはこう記されています。
「未来への道」Pathway to the Future
この道は、筑波研究学園都市50周年を記念し、多くのみなさんに、科学に親しんでいただく憩いの場として設置しました。
つくばゆかりのノーベル賞受賞者のモニュメントや次世代を担う青少年に向けた科学者などからのメッセージレリーフ「英知のみのり」などに触れていただき、未来に夢をはせていただくことを期待します。 つくば市 2015.3
ここに、空席の「未来の台座」があります。
この台座は、ノーベル賞受賞者を始め、世界で活躍するあなたの未来のためのものです。
この上に立ち、未来のあなたの姿を想像し、「夢」や「希望」をいだいてください。
と記されています。
貴方達が立ってみられる台座です。
ぜひ早い時期に訪ねてください。
この研究学園都市つくばの地で、楽しい大学生活のために努力、工夫をしましょう。
小さな成功体験の積み上げが、大きな成果への道です。
大学教職員の皆様、そして先輩、仲間、つくばという環境を活かした充実した大学生活を期待し、本気での大学生活への挑戦を祈念します。
社会が諸君の奮起に期待しています。
平成29年4月5日
筑波技術短期大学(元)学長 西條一止