Ⅳ 特殊な部への刺鍼練習

1 側臥位での頚部刺鍼

① 側臥位で頚が楽な状態に枕の高さを調節する。 

② 押手を軽くする。押さえない。

③ 頚部を触診し、緊張している部分を確認する。 
 風池、天柱、C4もしくはC5の 外側の部分に集約されてくる。
 特に頚のこりが強う時には、適宜、鍼の本数、刺激の仕方を工夫する。

④ 寸3の02番。できるだけ細い鍼を用いる。頚の太い男性では寸6も。
  寸3を3〜3.5cm刺入することが大切。頚部の筋は深い。

⑤ 刺入は静かに十分に時間をかけて。3本の鍼を5分間かけて刺入する。

⑥ 緊張で硬い時には、無理に押し込んではいけない、硬いところでは鍼をしばし留める。

⑦ 左右差がある時には、軽い方から始める。

⑧ 心地よさを提供する鍼にする。第一の売り物。

2 背部刺鍼  身体が楽になった感じを与えられる

① 脊柱起立筋の解けない過緊張に刺鍼し緊張を少し緩める。

② 脊柱起立筋を良く触診し、刺鍼部位を決める。

③ 肋間は避け肋骨部位で刺鍼する。肋骨に当てておれば肺に刺鍼することは100%ない。

④ 棘突起、横突起をねらう。脊柱の運動に関わる刺鍼(棘間筋、半棘筋など)。
  肋骨に関わる刺鍼(最長筋など)。

⑤ 10分間程置鍼する。もしくは局所低周波通電10〜15分間。

Ⅲ 刺鍼練習の順序

1 刺鍼練習器による練習

  切皮、刺入が確実にできるまでは練習器。

2  鍼の刺入は、常に深さをcmで意識させる。

3 用いる鍼

  寸3の02番が確実にできるところまで行う。

4 生体への刺鍼

① 生体への切皮、刺入は、自己の下肢で、腹部で練習。

痛くなく、確実にできたら、お互い同士の練習へ。

② 他の人に刺鍼する練習は、背部で肩甲間部、Th3〜7の間で行う。

基本的な姿勢をつくるために背部を用いる、
最も安定した坐位姿勢の基本姿勢を完成させる。
刺鍼は膀胱経の1側線に行う。
他の部に刺鍼しないように絆創膏などで
膀胱経の1側線の外側、上下を囲うなどの工夫をし、気胸などの事故を防ぐ。

③ 気胸を避ける指導を十分に行う。

④ 基本的姿勢ができたところで身体各部への刺鍼練習へと移行する。

 「日本の医療改革の新しい担い手は、
     鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師であるという意識の革新」

今回は、割り込みです。

鍼灸、あん摩マッサージ指圧は、実質的にはわが国の医療から外れています。
視覚に障害のある人達の教育機関を除いては、国公立の教育機関はありません。
公的に鍼灸師を養成しようとはしていないのです。

統合医療の流れは、病気の治療に生体の治す力を活用しようとするものです。
現代医学には身体の力を活用する視点はありません。
経験医術は、生体の治す力が主体の治療です。
その力を取り入れなければというのが統合医療の流れです。

日本医療の患者の大半を占めるのはかって成人病といわれ、
今、生活習慣病といわれる慢性疾患です。
これらの疾患群は、成人病対策としての早期発見、早期治療という対応では
患者を減らすことはできないことが判明しました。
生活習慣を好ましいものに治すことで予防し改善させなければならない
という判断になりました。
そして、厚生労働省は「生活習慣病予防として、1に運動、2に食事、
しっかり禁煙、最後にクスリ」といっているのです。
1に運動、2に食事は、まず、身体の機能を整え高めることが優先されるということを
明確に宣言しています。
しかし、岡本裕医師が「9割の病気は自分で治せる」中継文庫の中で述べているのは、
多くはまずクスリを処方し、おいしい患者(医療機関のもうけになる)にしているといっています。
身体の力で解決することが望ましい、それで十分でない時にクスリをが、厚労省の方針なのです。

鍼灸・マッサージは「未病を治する」といってきました。
局所治療のみでは時代の求めに応えられません。
求められているのは「身体の治す力を整える」治療です。

私が主張する自然鍼灸学は、身体の治す力を主体とする治療であり、
身体の反応性に方向性を与えることができます。
これは、生体の反応に方向性を与えることは「補瀉」の原理です。
時代の求めである「身体の治す力を主体とする治療」を身に付けましょう。
日本医療の新しい担い手として「誇りと自信」を持って自らの意識を高めましょう。

治療者が本当にそのように思っている時、かんじゃを説得できます。

治療者が社会に対して貢献しているという本当の自信が人々を動かします。
社会の期待に応えられる力を身に付けましょう。
私はその求めに応えたいと思います。

3 指導のあり方

① 実技は、60点以上で合格では、治療にならない。
90点以上満足できる技術が必要である。

② 基本的に個人単位で評価し進行させる。

③ 習得の遅い学生には宿題を課し、技術の習得を促す。

④ 刺鍼練習器での宿題は危険がないので問題はないが、
生体への刺鍼の宿題は安全の確保を確実にしなければならない。

Ⅱ 道具について

1 鍼の太さと長さについて

① 太さ、長さは、必要最小限にする。

② 太さ、長さによる違いを測る。 
 キッチンにある1g単位の測りで、鍼の硬さを測ることができます。
太さが02番の同じ太さでも、長さの違いが鍼の硬さを変えます。

以下、5月29日まで10回に分割し述べます。

Ⅰ 刺鍼について

1 押手と刺手

1-1 押手と刺手に求められる基礎的機能

① 姿勢
 背筋を伸ばす。

② 腕の構え
 力を抜いて、ゆったり構える。
 手関節を真っ直ぐに伸ばした状態。背屈、屈曲をしない。  

1-1-1 押手の基礎

① 安定した押手をつくる。
 母指、示指の圧を適度につくる。皮膚を押す圧を適度につくる。

② 臨床における押手
 母指、示指の圧を自由に変えられる。皮膚を押す圧を自由に変えられる。
 押手の基本は、皮膚に触れる程度に軽い押手。特に筋は押さえない。筋は押さえられると反発し収縮を起こしやすい。特に腰部の刺鍼では、鍼を受ける人は腹式呼吸になるので腰部の上下運動を妨げてはならない。軽い押手である。

1-1-2 刺手の基礎

① ゆったりと上肢の持続的な圧で刺入する。手関節のスナップを動かす波状に力を用いない。

② 鍼を持つ母指、示指は腕の力を鍼に伝える役割であり、刺入圧には用いない。

③ 細い鍼の刺入では、押手、刺手で鍼のたわみ(曲がり)を上手に補正する。

④ 呼気時刺入を身に付ける。

⑤ 筋が緊張しているところはひびき感覚が起きやすい。前揉ねつなどで緊張を和らげると良い。

2 切皮について

① 基本的な切皮は示指と中指を弾く。基本的な切皮を身に付ける。

② 龍頭の頭を叩き、鍼管は叩かない。

③ 身体各部で切皮の仕方も変わる。
 足底は一段切皮。

本年の1月26日(火)放送のNHK総合テレビ、プロフェッショナル:移植外科医、加藤友朗という放送がありました。

加藤医師は46歳ニューヨークで活躍中の世界の先端を行く移植外科医です。移植外科医としてすばらしい活躍をしておられますが、臨床技術の実践者として、臨床技術を学ぶものにとって普遍的なすばらしい示唆を与えてくれます。初心者へのオリエンテーションなどで活用させていただくには格好の内容です。

①世界の最先端移植医療を実践している。

②学んだことを実践するだけでなく、その技術がどのように生かせるかを常に工夫、新たな発想し、他の機関では手術不可能という患者の手術を可能にし成功している。この工夫、新たな発想というところが非凡でありすばらしいところです。

③このすばらしい臨床を可能にし支えているのが、正確な血管縫合などの基礎的技術であること。

④レベルの高い臨床成果を可能にするには小さなトラブルを見逃さずしつこく食い下がるという丹念な作業をすること。

⑤単に命を救うではなく、快適な人生を可能にするために最大限の努力をすること。

⑥常に努力する姿勢が上記のことを可能にしていること。

これらのことが45分の時間の中で紹介されています。内容の構成もすばらしいと思います。私は関係している学校等で先生方の研修に、学生へのオリエンテーションに薦めています。 

臨床のできる鍼灸師を育てるカリキュラムについて述べる時、この番組の内容が大きな力になってくれると考えています。特に鍼灸などが古代からの伝統技術という特殊な領域というイメージから解放し、現代に息づくものである広がりを持たせてくれます。

臨床ができない鍼灸師を排出する鍼灸学科を如何に脱出するか、が今の鍼灸師を養成する機関の最大の課題です。テーマです。

臨床ができる鍼灸師を社会に排出してこそ、養成機関は社会への責務を果たすことになります。臨床のできない鍼灸師を排出している養成機関は社会への責務を果たしていません。ましてそれは卒後教育の課題であるなどは持っての他の論議です。責任転嫁です。

この課題について、どう、対策を提案するかについて来週から書きます。

今週は、「9割の病気は自分で治せる」岡本 裕著、中経出版。

日本の医療の現状を医師として反省し医療を見つめています。

高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満症、痛風、便秘症、頭痛、腰痛症、不眠症、自律神経失調症などの慢性疾患は、薬物は対症療法であり症状を軽減するのみで根治療法ではない。むしろ身体の治す力を弱くしてしまい治りにくくする。生活習慣を改善し身体がもつ自然治癒力を生かすことこそ医療の根本治療と叫んでいます。患者自身が自分自身の人生と向き合い薬に依存しない自立的な生活が医療の基本です。鍼灸などの治療も依存性を与えるのではなく、患者が生活習慣を改善し症状を改善して行く介助役としてあるべきです。身体がもつ自然治癒力を主とする治療は、介助役として最も推奨されます。本書は自信を持って臨床に従事する大きな支援になります。

571円+消費税です。ぜひお読みください。

2-3 疲労回復の鍼治療
① 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 7呼吸回          1寸 01番 1本
②-1 腰部局所刺鍼   10分間置鍼
   大腰筋                                    2寸  3番 2本
   足底筋                                    1寸 01番  2本
②-2 背部刺鍼   未病の徴                    寸3   1番  10本
③ 側臥位 頸部刺鍼                             寸3 01番 6本
④-1 M6 10分                           寸3 3番 4本
④-2 腹部刺鍼   未病の徴           寸3 01番 10本
⑤ 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 10呼吸回         1寸 01番 1本
  鍼治療の積極的な魅力②で述べた第二位がこの治療の②-2 背部刺鍼です。
2-2 肩こり・緊張型頭痛の鍼治療:鍼の魅力を示す。
① 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 7呼吸回          1寸 01番 1本
② 背部刺鍼   未病の徴                    寸3  1番  10本
    肩外兪、肩中兪、天りょうの部、肩甲間部、に3本
        Th7以下の背中に2本
③ 側臥位での頸部治療:魅力の鍼                 寸3 01番 6本
      天柱・風池・Cの4もしくは5の外側。各側3本。
④-1 M6 10分                           寸3 3番 4本
④-2 腹部刺鍼   未病の徴           寸3 01番 10本
⑤ 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 10呼吸回         1寸 01番 1本
 鍼治療の積極的な魅力①で述べた第一位がこの治療の、③側臥位での頸部治療です。 
1 治療を考える基本的事項
1-1 治療を構成する三つの条件
① 主訴に対する治療
② 未病の徴に対する治療
③ 身体の治す力に対する治療 
1-2 上記の治療を構成する三つの条件を満たし、削ることのできるものを削る。
① 仰臥・伏臥位の治療で置鍼、パルス治療の刺鍼を先に行う。
② 未病の徴に対する治療を、最小限、どのようにするか。 
2 治療各論
2-1 腰痛鍼治療:立位バランスを整える。
① 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 7呼吸回          1寸 01番 1本
② 腹部刺鍼   未病の徴                    寸3  01番  10本
③-1 腰部局所刺鍼   10分間置鍼:腰痛治療の基本、鍼の魅力を示す。
   大腰筋                                    2寸  3番 2本
   中殿筋                                    2寸 3番  2本
   足底筋                                    1寸 01番  2本
③-2 背部刺鍼      未病の徴                     寸3 1番 10本
④ 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼 10呼吸回         1寸 01番 1本
 大腰筋の刺鍼は、鍼の積極的な魅力:第三位にあげました。

澤瀉久敬(おもだか ひさゆき)先生は、1941年から大阪大学医学部で、我が国で初めて医学概論の講義をされました。この医学概論は、第二次世界大戦終戦間近の、昭和19年からの講義録です。鯛二部 生命について、第三部 医学について、の三部からなります。新装版として出版されているのは第一部です。

私は、教員になって間もなくのころに、一端、絶版になっていたものが復刊されたものを求めました。この本は誠に名著です。言葉遣いはとても難解ですが、内容はすばらしく、特に、第一部科学についてが大好きです。この第一部科学については、筑波大学理療科教員養成施設で、筑波技術短期大学で、日本伝統医療科学大学院大学で教材として使わせていただいてきました。今回、平成医療学園教員養成施設で用いようとした時、持っていた図書が見あたりませんでした。主な部分のコピー持っていたのでそれで講義に用いましたが、ひょっとして買えないかと思い、アマゾンで調べました。そして2000年に新装版が発行されていることを知り購入できることが解りました。購入できるならぜひ紹介したいと思い今回です。ぜひお読みください。

大腰筋刺鍼の魅力。老人姿勢は、股関節、膝関節が曲がり、背中が曲がった姿勢です。
大腰筋の緊張による股関節がスムースに伸びにくいという状態が基本にあり、
膝関節を曲げることで全身的な立位姿勢を保ちます。
この老化の基になりやすい、股関節の疲労を改善しようというのが、大腰筋刺鍼です。
大腰筋刺鍼を中心とする立位バランスを整える鍼治療です。

腰痛は年齢とともに増加する訴えです。
立位バランスを整える、歩行バランスを整えることこそが
腰痛予防、身体の活動性を維持することに大切なことです。

70歳代の方では、治療直後に数歳若返ったような気がします。といわれます。 

鍼の積極的な魅力の第三位にランクされると思います。

人類が直立二足歩行をし、今日の先進国における文明、文化の下で、
最も大きな負担を負わされたのが脊柱起立筋でしょう。
その結果、脊柱起立筋の解けない過緊張がほとんどの人達に見られます。
これは背中に荷物を背負っているような状態になりますから背中の疲労感を高めます。
この筋の解けない過緊張は簡単には緩みません。
1回の治療だは全部はとうてい緩みませんが、少し緩みます。
この少しの筋の過緊張の緩みが、荷物を下ろしたような軽快感と呼吸しやすさを感じさせます。
身体がとても楽になった気がいたします。

このような、先週の頚部刺鍼による頭の芯の疲れの改善、今週のリフレッシュした感じなど
具体的な好ましいと思ってもらえる感じを体験してもらえることが大切です。

鍼の積極的な魅力の第二位にランクされると思います。

鍼治療については3人に2人は、痛い、怖いなどのマイナスイメージを持っています。

昔から「良薬口に苦し」といいます。
治療ということは、当然、楽しく、気持ちよくというわけにはいかないわけです。
苦痛であっても我慢して治療を受ける。
その治療の苦痛を耐えて病の苦痛、命の危険から解放されるものです。

我が国は半世紀以上も前から国民皆保険という世界でも最も医療を受ける事情の良い国です。
日本人の多くの人々は、一般的に医療を受けることに不自由をしていない状態と考えられます。
このような状況の中で、鍼を治療として受けようというのは、日本人にとって一般的なことではないわけです。

マッサージなどの手技療法は、「気持ちが良くて身体が楽になる」ということをほとんどの人達は理解しています。
多くは気持ちよく、楽になりたいという目的で施術を受けています。
肩たたきは、童謡の世界から始まるのです。

治療法としての鍼の良さを一般化して発展させるには国民皆保険の国では保険です。
未病に対する対策の良さは確かです。
これを一般化するには、積極的な魅力を明らかにすることです。
多くの人達に、いいですねという人々に求められる積極的な魅力を明確にすることが必要です。

アメリカで代替医療に対する研究費が沢山使用されているのは、
国民の利用が多いので、その科学性を明らかにしなければならないという状況にあるからです。

欧米の人達には肩こりがない。といわれます。
肩こりがないのではなくて、緊張型頭痛の症状として表現されているということです。


緊張型頭痛は頭頚部の筋の持続的緊張により発症します。
締め付けられるような重圧感です。この感覚は、肩こり感ですね。
日本人は頭痛と肩こりを分けて受け止めています。


肩こり、頭痛を訴える人は、日本人では、35歳から64歳の年代の女性では20%を超えます。
頭がスッキリしないという程度の疲労感は大概の人は感じています。


この疲労感に頚部の刺鍼治療はとても心地よい刺激感を与えてくれます。
これぞ脳を休ませる、脳のストレスを解消する有力な好ましい刺激感です。


極めて細い鍼を用い、微弱な心地よい刺激が脳の深部の疲労感を回復してくれます。


全身の身体がもつ仕組みを動かし、身体の調節する働きを高め、持続的な効果を期待できます。


鍼の積極的な魅力の第一位にランクされると思います。


具体的な刺鍼法は2月に述べます。

1月2日、2010年の最初の土曜日です。
「土曜の一言」の場で今年も種々の思いを発信して行きたいと思います。
2010年の年明けに何か期待に満ちたことを述べたいなと思っていました。
考えました。

子供に幸せになって欲しいなという思いは親は誰しもが思うことです。
最も基本的な思いです。このような願いを叶えることを考えた時に思いました。
たとえ子供とはいっても、自分とは別の人間です。

私達の寿命を考えた時に、私、個人の個体は死にます。
子供の寿命は、受精した時に親の性細胞の寿命がリセットされ新たな寿命をスタートさせる。
ということを考えた時、確実に細胞は親から子に伝えられていることを実感しました。
寿命は新しくなるけれども細胞は伝えられているのです。
遺伝子の半分は私のものなのです。
私自身のあり方が半分は可能性として子供の中にあるのです。
後の半分の遺伝子も、この人と人生を共にしたいと思って結婚した人のものです。

子供に願うことを私自身が実践することが、子供の可能性を示すことであると考えます。
明るい年は、ひとりひとりが自分自身の力で切り開くことである。という結論です。
種々の問題はあります。
しかし、良かったなと思えるかどうかはそれぞれの人のあり方です。
今年は寅年です。私は寅年です。
最も良い心身の状況をつくり、社会とともに生き、何か貢献したいと思います。

21世紀になり10年が経過しました。21世紀の10分の1が終わったわけです。

私は、私の人生の60歳代としてこの10年を経験しました。
人間の営みとして経験して学べることが年を重ねることで可能であることを知りました。
その経験は、情報検索、照合が可能な脳の中に蓄えられます。
種々の検証ができやすいということです。
これはそれぞれ年を経て解ることなのですね。

しかし、大事なことはさらに経験を積むということです。
その新に得た経験が過去の経験の上に種々の修正を求めさせることが意味をもちます。
社会からリタイアして個に閉じこもってはさらなる発展は期待しにくいのでしょうか。

この経験をどのように社会に反映し、貢献できるよう生かせるかが
2010年に向けての私の課題ということです。
それは私自身の残された時間の過ごし方ということでもあります。

鍼灸や柔整の専門学校は、国家試験の合格率90%以上の目的に向かい、
懸命に努力しています。
先生方は必死です。
年度末には合格率という具体的な数字として社会に登場するのです。
非常に説得力のある仕組みです。
しかし、免許制度とは、社会において職業の業務内容を保持するための制度です。
鍼灸でいえば臨床力という業務についての保証のない免許は、
業務内容を維持するという目的にかなっていないわけです。
目的にかなっていないような制度がまかり通っているのは、社会が知らないからです。
解らないからです。

国家試験という制度を作り、関係者は鍼灸を発展させようとして努力してきたわけですが、
職業業務としての実態を伴わない国家試験合格率という幻想に振り回されています。
この状態は、教員をだめにます。
入学者に無駄な時間とお金を消費させ社会に損失を与えます。
この状態から脱出しなければなりません。
教員にその力があるでしょうか。
教員は給与生活者です。期待できないでしょう。
学校の設置者、管理者です。管理者がこの状態に気付き、改善の方策を持たなければなりません。
それも学校単位では不可能です。学校群全体としての取り組みが必要です。

若い人達の中に社会に役に立つ仕事がしたい。そんな人達が現れてきている。
一見、よいことだなと思います。
しかし、考えてみれば、現在の社会が、
あまりに社会の役に立っているとは思えないぞという仕事が
多すぎるということではないのでしょうか。

健康産業も、健康になりたいという人々の期待を利用した
お金儲けがあまりに多いということでしょうか。

逆に、鍼灸領域に問われることは、ただ真面目に、こつこつと治療に励み、
「患者に喜んでいただく」、そのことは社会の期待に応えていることだと思いますが、
情報化社会の今日において、競争社会の今日においての、社会の期待はもう少し異なり、
力の大きさを期待されていると思います。
それに応えることが求められています。

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